2012年5月14日月曜日

三春シェルターでのボランティア活動で考えさせられた - 動物も大事だけど、まずは人間でしょう

ここは福島県田村郡三春町、福島第一原子力発電所の事故による20kmの警戒区域内から保護されてきたペット達が暮らす福島県動物救護本部の動物収容施設、通称『三春シェルター』です。三春シェルターは2010年に閉店したパチンコ店を改造した施設で、普通に想像する”動物の避難所としてのシェルター”には見えず、実際に私もボランティア初日はカーナビの助けを借りてもシェルターの前を通り過ぎて、引き返すことになってしまいました。

この三春シェルターには2012年4月16日時点で犬85頭、猫45匹が常勤のスタッフとボランティアの助けを得て暮らしています。
三春シェルターは朝から賑やかです。10時前から始まる作業のために集まったスタッフやボランティアの雰囲気を感じ取った犬たちが9時ぐらいから一斉に声を上げアピールします。三春シェルターの犬舎は大型犬も暮らせる個室が78室あり、この他にクレート(キャリーケース)やケージが21個備えられています。午前の作業はこの犬舎の掃除です。スタッフの方が犬舎から1頭ずつ誘導してくる犬をボランティアが受け取り、屋根のあるパドックに係留します。犬達は喜んで走り出しますが、パドックに到着する前に我慢できなくなっておしっこやウンチをはじめる犬もいて、その排泄物の片付けにスタッフの方々が走り回ります。次に犬が出て行った犬舎の敷物とクッションの新聞紙を片付け、噴霧器による消毒液の散布と雑巾がけを行い、犬舎に新聞紙を敷き詰めて最後にクッションとなる裂いた新聞紙を二掴み撒いてパドックから犬を戻します。排泄物や獣臭でむせ返りそうになる中での作業になりますが、スタッフ、ボランティア共に犬が大好きなメンバーばかりですから協力しながら1室ごとの丁寧な掃除は進行していきます。とはいっても中腰での雑巾がけは特に大変で、三月のボランティア初日は寒さを警戒して念の為に着ていたフリースのせいで、作業用の雨合羽の中で汗まみれになってしまいました。

短い昼休みが終われば午後は散歩から始まります。広いとはいえ元パチンコ店の駐車場をぐるりと一周するだけですが、はしゃぐ大型犬に当たるとこれも大仕事です。散歩の時間が終わればパドックの消毒作業を行い給餌の時間です。犬達はご飯に大喜びで、これで満足した犬達も静かになり一日の作業が終わります。5時間ほどの作業とはいえ日頃の運動不足が祟ってへとへとにはなりますが、犬達の喜ぶ姿とスタッフや他のボランティアの方々との気持ちのいい連携作業で強い満足感を感じることが出来ました。

しかし延べ四日間の三春シェルターのボランティア作業を終えて気にかかるのは、三春シェルターの(というか被災ペット保護の)正当性(妥当性?)でした。

三春シェルターにいる犬と猫の多くは大熊町、双葉町、富岡町、浪江町、楢葉町、南相馬市(小高地区など)から避難されている方々のペットで、飼い主も誰かが判っている犬と猫がほとんどです。もちろん10万人近くの避難者の方々の、今でも大変な生活状況である事を見聞きすると、簡単に『早く引き取った方が良いのでは?』とは私には言えません。でも、これ以上の分断生活が続く事が、パートナーとしてのペットと飼い主の関係に良いものとも思えません。三春シェルターの犬や猫達も、飼い主が『譲渡可能』を認めれば新たなパートナーをとの出会いがあるのかもしれませんが、ほとんどの飼い主の方々は譲渡を認めていません。それは愛情であることがほとんどである事と信じていますが、犬達の冴えない顔を見ているとどちらが幸せなのか混乱してしまいます。
更にはキツイ言い方かもしれませんし、叩かれる事になるのかもしれませんが、三春シェルターでの被災ペットと一般的な生活困窮者である人間の待遇の差に違和感を感じてしまうのです。
三春シェルターには常勤のスタッフもいて、日本各地からのボランティアが活動に協力して日々5、6人から10人程度で運営されています。三春シェルターに収容されている犬と猫たちの総数をピーク時の200頭(匹)として10人で世話しているとすれば、人間1人当たり20頭(匹)の面倒を見ていることになりますが、民生委員の一般基準の最小単位が1民生委員あたり70世帯と比較しても厚遇されているように思えるのです。私自身もパートナーとしてのワン公と共に暮らす身としてペットを大事にはしたいのですが『まず飼い主としての人間をどうにかすべきではないのか』ではないでしょうか?

3.11に始まった大災厄の混乱は福島第一原子力発電所の事故の為に、このグロテスクな状況が終息にたどり着くところを見せてはくれません。普通であったペットも含めた家族との日常生活を取り戻せていない方々が多い現実を改めて知り、これからも自分で出来ることは協力したいと考え、矛盾を感じつつも継続して福島県動物救護本部のボランティア活動を応援します。

4日間のボランティア期間に三春シェルターに救護されているペットに面会に来た家族が一組だけありました。その家族は3人で抱えきれないほどのキャットフードを持って、お父さんと思しき人が申し訳なさそうにスタッフの方に「あいつが好きな餌を持ってきたんですが、あげられますかの~?」とて聞きながら面会に来てくれたのは私にとって救いでした。

2012年5月14日 百田 義弘

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