2012年4月27日金曜日

第6回カリキュラム 原稿提出

今回のメニュー

1.取材活動のスケジュール管理

2.五感を使って文章を書く


1.取材活動のスケジュール管理



①締め切りが近づいてきたら、いまある材料でとにかく書く

60点をクリアしていれば、出さなければだめ。時間をかければ80点90点に近づくかも知れない。けれど締め切りが設定されているときは、取材したところまでとにかく書く。


②スケジュール管理を徹底する

<現地に足を踏み入れたときには取材の半分は終わっている>

これはどういう意味か.…

東京でやるべきことはすべてせよ!

・取材記者はスケジュール調整との戦い。取材の下手な人はスケジュール管理が下手。

・現地入ってからは、アポ取りや調べ物をするをする必要がない状態にする。

・取材現場に入ったときは、“スケジュール通りに進めるだけ”が理想。


取材例 Aパターン 

*3月11日から15日まで福島に連泊取材*

・そのすべての日程のスケジュール(行く場所、会う人、時間)を2月中に決めておく。

・うまくアポイントを調整し取材日程が組めるかがある意味勝負どころ。

・空き日を一日確保しておく。


取材例 Bパターン
*新しいテーマで 新しい現場を取材。4回取材に行けるチャンスがある。

・一回目はほとんど予備取材。現場に入ってみて、全体の流れを読む。初回の取材で、幹の部分が見えるようにする。(見出しがつくようにすると言い換えできるかも知れない)

・一回目の取材を東京に持ち帰り、どの組織、どの人に当たればよいか、作戦を練る。アポやスケジュールを組んで再度取材。

・二回目、三回目で枝や、葉っぱの部分を完成させる。

・もちろん4回目は予備取材日として確保しておく。


ジャーナリストはスケジュール管理がうまくなくてはならない


2.五感を使って文章を書く



<人物もの原稿の場合>

取材した人物を目の前につれて来なければならない。彼女のすべてを言葉にしてしまう。

会話文を散りばめただけでは、それはテープから起こしただけ。彼女の「匂い」や「感じた色」、「声の調子」「しゃべり方」を具体的にどんどん書いていく。

それは 5感を総動員して書く、ということ。


<現場もの、人物もの原稿(共通して)>

被取材者が語る出来事や場所が、想像できないときは自ら現場に足を運ばなければいけない。

たとえば 昔住んでいた場所の話をしていたら、自らその場所までいって、どれだけ建物が古いのか、どんな匂いがするのか 自分で感じて確かめてくる。その作業を通して始めて文章に落としていける。


<言葉を具体的にしていく>

「苦しそうな表情をしていた」 

この言葉は なにかを表現しているようでなにも表現していない。

それは、どんな顔だったのか、なぜ苦しかったのか。描写する。


「老人ホームにいる、寝たきりの70歳のおじいさん」

どんな服装しているのか、どんな職業人生だったのか。その人がわかることを言葉ですべて伝える。それを字数制限を気にしつつ、具体的に描写していく。


五感を総動員して文章を記述しよう。



(佐々木健太)



2012年4月14日土曜日

第5回カリキュラム 取材の実践(カメラ編)

今回のメニュー

1.カメラを使ってみよう

2.記事のなかの会話文

3.書き手のリテラシー

 

1.カメラを使ってみよう

<写真のバリエーションを増やす>

・どうやってカメラを操作するか。この問題は、家電量販店で販売されているカメラを手にした途端に、すべて解決される。

・問題は、どう写真を撮るか、どんな画角で撮るかの問題に移行している。


♦バリエーションの増やし方♦

 

①引きとアップ

⇒例えば:全体写真、ネクタイから首だけ写真、顔だけのアップ写真。これだけで、三種類のバリエーションになる。
*アクティブさ出したい場合は、写真のなかに「手」が入ると、アクティブさを表すことができる。

 

②人とモノ

⇒インタビューの写真を撮る時、表情・姿だけでなく、被取材者が所有しているモノや立っている場所がその人を語ることもある。
仕事の資料が人間を語ることもある
                   

③ヨコ位置とタテ位置

 ⇒カメラを横に構えるだけでなく、縦に構えてとる。印象がグッと変わる





ヨコ位置


タテ位置






*そもそも、なぜバリーションを増やす必要があるのか?

・記事としてまとめる際に、編集者が使える写真の選択肢を増やしてあげるためである。
・フリーでやる場合は、自分が編集者として選択できるものを用意しておくため。

♦写真がぐっとうまくなるちょっとした工夫♦

 

①目の高さから撮るのをやめる


1.しゃがんでで撮る

2.高いところから撮る

・実にシンプルだけれど、自分の目線から意識的にずらすことによって写真に変化をつける


フラッシュを消して撮ってみる 

 

ヨコ位置だけでなくタテ位置で撮ってみる

・イマイチな写真も、タテ位置にすることでよい写真になることがある。
・記事編集の段階でタテ位置写真が使われる傾向がある。


ズームではなく、自らもう一歩を身を乗り出して撮ってみる

・手動トリミング機能


⑤単調な写真だったら、思い切って斜めにして撮ってみる

・日本の新聞写真は「水平線は水平に、重力は垂直方向に」がルール。これでは、ダイナミックに欠ける。思いきって、カメラを動かしてみる


⑥あらゆるものを三脚として利用する

・究極の三脚は地面だ。
・車の上、ガードレールも三脚として使える。
・電柱もカメラを横で固定できる。
・目の前のあらゆるものが三脚に見えてくる


⑦タイマーを使ってみる

・タイマーは記念写真のために存在しているのではない。ブレをなくすために利用するもの


♦報道記者として大切な心がけ♦

目に映ったものは、片っ端から撮る。

 ・「目に付いたものは全部被写体であり、カメラのフィルムを惜しむな。」
→新聞社時代に先輩から教わったこと

 ・殺人事件の現場に落ちている落ち葉でさえも押さえておく。あとで決定的な証拠写真になるかも知れない。

・撮ったものはあとで削ることはできるが、撮ってないものはどうしようもないのだ。


2.記事のなかの会話文

<会話の再現性はどこまで高めるべきか>

・文中の「」で引用する場合はセンシティブにならないといけない。
・とくに会話上の主語を取り間違えてはいけない。
→被取材者のAさんの発言なのか、国の役人の考えをAさんが代弁した形になっているのか。
ここは、慎重に会話を再現していかなければいけない。
・バックアップとしてのICレコーダーが役に立つ
・会話文の挿入の仕方によっては、被取材者が自発的に話していないことこそがニュースであると示すことができる。とくに役人とのインタビューでは有効である。

例えば...

--××とはどういうことですか??
役人「○○○」

--××に関してどう考えていますか?
 役人「○○○」

このように、相手の会話文を文中に挿入するだけではなく、会話そのものを載せてしまうという手法も場合によっては有効である。被取材者が自発的に語っていないこと、会話のなかで新事実が発覚していくことの過程を示せる。

<引用文や会話文をどのくらい、記事のなかで使用したらよいのか>

・専門家のコメントを引用して結論を導くくらいだったら、そのコメントの正当性を証明するくらいの事実を取材で収集すべき。
・会話もあまりに多くなると、記者自身はなにを伝えたかったのが見えなくなる。
・けれど、初心者は「飛び石方式」で記事を書いていてもよい。

「セリフ」...地の文...「セリフ」...地の文...「セリフ」

*印象的なセリフとセリフをつないで、記事をまとめていく手法が「飛び石方式」。

・理想はすべて地の文で記述する。
・被取材者のセリフを一個も使っていないけれど、声を聞こえてくるかのような文書


3.書き手のリテラシー

<切れ味のスパッとした主張を書こうとすると、現実から離れてしまう>

・現実に起きていることは複雑である。
・ひとつの変数や、因果関係だけで現実を切り取るべきではない。
 
「観光地の景気が悪化してしまったのは、原発の風評被害のせいだ」

→ この主張は勢いはよいが、原発事故前から観光地が構造的不況に陥っていたという現実を無視してしまっている。観光地の経済が冷え込んだのは、原発事故という変数ひとつだけのせいではない。

・現実は複雑に要素が絡み合っている。そのことを無視してしまうと、現実から遠ざかった記事になってしまう。

・現実を素直に記述する。


(佐々木健太)


2012年4月1日日曜日

カリキュラム4 取材のあれこれ(実践編)


今回のメニュー

1.取材後、なにを記事のコアにするか

2.記事を書き始めるための下準備

3.インタビューにおける2つの鉄則

4.取材ノート、カメラの使用について


 

1.取材後、なにを記事のコアにするか


<取材後の「雑談」で記事の見出しが立つ>

・取材後すぐにパソコンに向かうと、なにを書いていいかわからなくなる。

・そんなときにやるべきことは「雑談」。

・取材から帰ってきた雑談で、開口一番に話す感想が記事のコアになり、見出しにもなる。
「取材どうだった?」と聞かれて、一言目に話す内容が一番面白い。

栃木取材を終えて帰京
「取材どうだった?」
「いやあ、観光地の賠償金問題も相当弱肉強食の世界だ」
「え??どうゆうこと?」
「大きな旅館は保障されるけど、街場のラーメン屋さんとかは相当弱ってるなあ」
「へえ。なんでそんなことになるの?」

このように雑談をすることで、記事のコアと書かなければいけないことが見えてくる。

記事で重要になってくる5W1Hが雑談をすることで見えてくる。




<報道記者は「母ちゃん聞いて!!」の精神であれ>

・記事を書くときに、ええかっこしない。社会的に意義のあること書かなければと思わない。シリアスに文章を書かなければとか思わない。

・小学生のとき、今日あった面白いことをお母ちゃんに必死に話そうとした「母ちゃん聞いて!!」のニュアンスで記事を書いていく。

・ただ面白かったこと、ただ驚いたことを文字で伝えるだけ。

 


2.記事を書くための下準備


記事の書き方
①物語を記述していく・・・熟練者
②事実の重要度から書き始める・・・初心者

初心者はまず②から試してみるとよい。
最初に記事の核心を記述してしまう。一種の定型。



<アウトラインメモを作成する>

記事で書きたいことをまず箇条書きにしてみる。

・福島のことを語れる資格があるのか。
・なぜ南相馬を選んだのか etc.

書きたいことを箇条書きにする作業が「アウトラインメモ」を作成するということ。

アウトラインメモを作成すると段落ごとの見出しがついていくことになる。

書きたいことを5ー10項目並べることは簡単。

アウトラインメモを作成したら、後は肉付けしてあげるだけ。

42.195キロを走るのは想像するだけでキツイ
→100メートルずつ走れば完走できる。

本の原稿を執筆するときも同じ。

原稿300枚書くのは想像しただけで倒れる。
→各章ごとにアウトラインメモを作成して、どんどん分割して書いていく。



<アウトラインメモは全体の設計図>

アウトラインメモは記事や本全体の見取り図や設計図の役割となる。

アウトラインメモを肉付けしていく作業をするときに、どうしても書けない箇所が出てくる。それは、さらに追加取材が必要だということ。

→ 取材の濃淡を視覚的に把握することもできる。



 

3.インタビューにおける2つの鉄則


<インタビュアーは聞き手であると同時にMCであれ>

インタビューは大体一時間程度。あまり長いと相手がうんざりしてしまい、次がなくなる。

限られた時間のなかで、いかに自分の聞きたいことを聞けるかが、勝負。

だが、インタビュー中は、こっちが聞きたいことと、被取材者が話したいことは当然のごとく違う。

筋が違う話が長くなってきたら、うまく軌道修正しなくてはならない。

相手の気分を損ねることなく、話の流れを整えていく、まさにMCの役割をしなければならない。

インタビューにMCとして、流れを軌道修正する。これがインタビューの鉄則のひとつ。




<予想していない面白い話が飛び出したら食いつけ>


しかし、思わぬネタが飛び込んでくる場合もある。


e.g. 原発事故を想定して避難訓練の話を町長にインタビューしていたのにかかわらず、突然、死の灰の話をし始めた。


10取材して5を書くより、10取材して1書くほうが厚みのある記事になる。
10取材するより11取材するほうがいい記事になる。

の取材の原則にあてはめて、面白い話は見逃さずなるべく食いついてみる。

面白い話が飛び出したら、食いつけ。これがインタビューの鉄則のふたつ目。

*面白い話に食いつきながらも、もちろん、自分が聞きたい話を聞くための軌道修正を忘れてはならない。




4.取材ノート、カメラの使用について


<インタビューはボイスレコーダーを使用したほうがよいか?>

使用してもよいが、バックアップ用。


*インタビュー内容を取材ノートに書き込むメリット

・データが飛ぶことがない。
・いつでも、どこでも取材することができる。
・インタビューの記録がビジュアル的に把握できる。
・インタビューの記録をインタビュー中に確認できる。←聞き落としがない。

*取材ノートの使用方法
①最初に聞きたいことをメモ書きしておく。
インタビュー中に聞いたことをバツしておく。
なにを聞いたか、聞いてないかを一目で判断できる。

②取材ノートの始め3Pまでは取材先の連絡先を書く。
なにか再質問をしたいときや、お礼をしたいときなどにノートの先頭を見ればよい状態にする。

とにかく記事を書くときのフラストレーションを少なくすることを考える。

効率を上げていけば、より多くの取材をすることができる。




<報道ではどのようなカメラを使ったらよいか?>

報道カメラの基本は広角レンズ

記事内では、写真の乗せられる枚数が限られている。
一枚に多くの情報を載せるために広角を使用する。

5枚ほどの写真を載せられる場合は、広角と遠隔をうまく使いわける。
全体の様子がわかる写真。動物のアップした写真などなど


(佐々木)